<<俊平〜失うということ〜>>


  高校二年・秋。

 突然、オレの視界に人影が入ってきた。
 慌ててオレは急ブレーキをかける。
 だけど、勢いがつきすぎていて止まれずに、その人影に激突してしまった。
 少しでも衝撃を和らげようと、オレは右足に思い切り体重をかけた。
 ・・・その時、オレの右膝がゴリッと・・・回った・・・気がした。

   ブチッ!!

 体の中で嫌な音がした。
 地面に倒れこむオレ。
 変な汗が・・・全身から噴出してくるのを、感じた。
 走っていた連中も、オレの異変に気がついて駆け寄ってくる。
 ユウやケースケの声がする・・・。
 た・・・立たないと・・・。

 オレはニヘッと笑って、すっくと立ち上がった。
「シュン、大丈夫?」
「おう、平気平気♪なんともないよ。
 それよか、オレがぶつかった子のほうが・・・あれ?」
オレは痛みを堪えて平静を装う。
 オレがぶつかった子・・・は、いつの間にかいなくなっていた。
 きょろきょろとあたりを見回してみたけど、どの子にぶつかったのやらさっぱりわからん。
「シュン?本当に大丈夫だよね?」
ユウが、しつこくオレに聞いてきた。

 右膝が・・・重たい・・・。

 でも、オレは笑って答えた。
「だぁから、平気だって」
オレのその顔を見て、ユウは怪訝な表情をしたけど、それからは何も言いはしなかった。

 この時に・・・病院に行っていれば、よかったのに。

 それから、三週間くらい経って・・・オレの膝は・・・練習中に限界に達した。
 医者が、オレに言った。
「どうして、こんなになるまで放っておいたの?」

 オレはケガなんてどうでもよかった。

 一つ、気がかりだったのは・・・

  来年の5月のインターハイ予選に間に合うかどうかだったんだ。









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